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大阪高等裁判所 平成11年(行コ)9号 判決

第9号・第10号事件控訴人,第11号事件被控訴人

大阪府地方労働委員会(以下「控訴人地労委」という。)

右代表者会長

田中治

右訴訟代理人弁護士

中村健

右指定代理人

田中哲男

那須治

後藤隆

恵木奏

第10号事件被控訴人,

新日本製鐵株式會社

第9号事件控訴人補助参加人,

(以下「被控訴人新日鉄」という。)

第10号事件控訴人(甲事件)補助参加人,

第11号事件被控訴人補助参加人

右代表者代表取締役

千速晃

右訴訟代理人弁護士

高野裕士

第9号・第10事件被控訴人

隈部紀彦(以下「被控訴人隈部」という。)

第9号・第10事件被控訴人

佐々木陽一(以下「被控訴人佐々木」という。)

第11号事件控訴人

新開勝政(以下「控訴人新開」という。)

第10号事件控訴人(乙事件)補助参加人

竹本正幸(以下「補助参加人竹本」という。)

右4名訴訟代理人弁護士

大江洋一

松丸正

野村克則

青木佳史

村田浩治

主文

一  控訴人地労委の第9号事件控訴に基づき,原判決中,控訴人地労委の被控訴人隈部及び同佐々木に対する各敗訴部分をいずれも取り消し,同被控訴人らの控訴人地労委に対する各請求をいずれも棄却する。

二  控訴人地労委の第10号事件控訴のうち,原判決中控訴人地労委の被控訴人隈部及び同佐々木に対する各敗訴部分の取消請求にかかる部分をいずれも却下する。

三  控訴人地労委の第10号事件控訴のうち,原判決中控訴人地労委の被控訴人新日鉄に対する敗訴部分の取消請求にかかる部分を棄却する。

四  控訴人新開の第11号事件控訴を棄却する。

五  訴訟費用は,補助参加によって生じたものも含め,第一,二審とも,被控訴人新日鉄に生じた分の4分の1を控訴人地労委の負担,その余を被控訴人隈部,同佐々木,控訴人新開及び補助参加人竹本の負担とし,その余を各自の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  第9号事件の控訴の趣旨

1  原判決中,控訴人地労委の被控訴人隈部及び同佐々木に対する各敗訴部分をいずれも取り消す。

2  被控訴人隈部及び同佐々木の控訴人地労委に対する各請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は第一,二審とも被控訴人隈部及び同佐々木の負担とする。

二  第9号事件の控訴の趣旨に対する答弁

1  本件各控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人地労委の負担とする。

三  第10号事件の控訴の趣旨

1  原判決中,控訴人地労委の被控訴人隈部,同佐々木及び同新日鉄に対する各敗訴部分をいずれも取り消す。

2  被控訴人隈部,同佐々木及び同新日鉄の控訴人地労委に対する各請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は第一,二審とも被控訴人隈部,同佐々木及び同新日鉄の負担とする。

四  第10号事件の控訴の趣旨に対する答弁

1  本件各控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人地労委の負担とする。

五  第11号事件の控訴の趣旨

1  原判決中,控訴人新開の控訴人地労委に対する敗訴部分を取り消す。

2  控訴人地労委が平成元年(不)第41号,平成2年(不)第11号,平成3年(不)第38号及び平成4年(不)第48号不当労働行為救済命令申立併合事件について平成8年7月16日付けでした命令のうち,控訴人新開の申立てを却下又は棄却した部分をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は第一,二審とも控訴人地労委の負担とする。

六  第11号事件の控訴の趣旨に対する答弁

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人新開の負担とする。

第二事案の概要

被控訴人隈部,同佐々木,控訴人新開及び補助参加人竹本(以下4名を併せて「被控訴人隈部ら」という。)は,平成4年までに控訴人地労委に対し,被控訴人新日鉄の会社内における少数派労働組合員としての活動を理由に昇格並びに賃金及び賞与の考課査定において同被控訴人により不利益な取扱をされたとして,同被控訴人との各雇用契約締結後19年又は25年経過時点での主事への昇格並びにその後の賃金及び賞与の是正及び昭和54年以降における賃金及び賞与の是正を求める救済命令の申立てを行った。

これに対し,控訴人地労委は,平成8年7月16日付で,被控訴人隈部らの昭和63年3月以前の主事昇格並びに賃金及び賞与の是正を求める部分を却下し,補助参加人竹本の昭和63年4月1日以降の是正を求める部分について不当労働行為の救済を命じ,被控訴人隈部,同佐々木及び控訴人新開のその余の各申立てをいずれも棄却する命令(以下「本件救済命令」という。)をした。

そこで,被控訴人隈部,同佐々木及び控訴人新開は,原審の甲事件における原告として,控訴人地労委に対し,本件救済命令中各申立てが却下及び棄却された部分の取消請求をした。補助参加人竹本は,同甲事件における原告として,本件救済命令中自らの申立てが却下された部分の取消請求をし,同乙事件における被告であった控訴人地労委の補助参加人として,本件救済命令中自らの申立てが認容された部分について訴訟活動をした。

また,被控訴人新日鉄は,原審の乙事件における原告として,控訴人地労委に対し,本件救済命令中補助参加人竹本に対する救済を命じた部分の取消請求をし,同甲事件における被告であった控訴人地労委の補助参加人として訴訟活動をした。

原審裁判所は,平成10年12月14日,甲事件において,控訴人地労委の本件救済命令中,同控訴人が,被控訴人隈部及び同佐々木の昭和63年以降における主事昇格並びに賃金及び賞与の是正を求める申立てを棄却した部分を違法として取り消し,乙事件において,本件救済命令中の補助参加人竹本に対する救済を命じた部分を取り消し,被控訴人隈部及び同佐々木のその余の各請求,補助参加人竹本及び控訴人新開の各請求をいずれも棄却する判決をした。

以上の原判決に対し,原審の甲事件において控訴人地労委の補助参加人であった被控訴人新日鉄が,控訴人地労委の被控訴人隈部及び同佐々木に対する各敗訴部分について控訴し(第9号事件),原審の甲及び乙事件において被告であった控訴人地労委が被控訴人隈部,同佐々木及び同新日鉄に対する各敗訴部分について控訴し(第10号事件),原審の甲事件における原告であった控訴人新開が控訴人地労委に対する敗訴部分全部について控訴した(第11号事件)ものである。

これらの救済申立て及びこれに対する本件救済命令,訴えの提起,原判決及び控訴の結果,原判決中,被控訴人隈部及び同佐々木の昭和63年3月以前の主事昇格並びに賃金及び賞与の是正請求に関する部分(控訴人地労委の却下判断を是認したもの)は確定したから,当裁判所は,同被控訴人らについては昭和63年4月1日以降の是正請求の当否を判断すべきこととなった。同様に,控訴人新開については,控訴人地労委が同新開についてした却下及び棄却の各判断に関する請求全部の当否を判断すべきこととなった。また,原判決中,補助参加人竹本の昭和63年3月以前の主事昇格並びに賃金及び賞与の是正請求に関する部分(控訴人地労委の却下判断を是認したもの)は確定したから,同補助参加人については,昭和63年4月1日以降の是正請求の当否を判断すべきこととなった。

以上の関係を表で示すと,以下のとおりである。

ア  被控訴人隈部,同佐々木

救済申立て 〈1〉19年(25年)時の主事昇格と賃金・賞与の是正

〈2〉昭和54年以降の賃金・賞与の是正

救済命令 (一) 昭和63年3月以前の〈1〉〈2〉の却下

(二) 同年4月以降の〈1〉〈2〉の棄却

一審原告 被控訴人隈部,同佐々木

一審被告 控訴人地労委

原判決 (二)の取消(請求認容),(一)の是認(請求棄却)

控訴 控訴人地労委 (二)の取消の取消請求

確定部分 (一)の是認は確定。

当審の判断 (二)の当否如何。

イ  控訴人新開

救済申立て 〈1〉19年(25年)時の主事昇格と賃金・賞与の是正

〈2〉昭和54年以降の賃金・賞与の是正

救済命令 (一)昭和63年3月以前の〈1〉〈2〉の却下

(二)同年4月以降の〈1〉〈2〉の棄却

一審原告 控訴人新開

一審被告 控訴人地労委

原判決 (一)(二)の是認(請求全部棄却)

控訴 控訴人新開 (一)(二)の是認の取消請求

確定部分 なし

当審の判断 (一)(二)の当否如何。

ウ  補助参加人竹本

救済申立て 〈1〉19年(25年)時の主事昇格と賃金・賞与の是正

〈2〉昭和54年以降の賃金・賞与の是正

救済命令 (一)昭和63年3月以前の〈1〉〈2〉の却下

(二)同年4月以降の〈1〉の命令

一審原告 (一)に対し補助参加人竹本,(二)に対し被控訴人新日鉄

一審被告 控訴人地労委

原判決 (一)の是認(補助参加人竹本の請求棄却),(二)の取消(被控訴人新日鉄の請求全部認容)

控訴 控訴人地労委 (二)の取消の取消請求

確定部分 (一)の是認は確定。

当審の判断 (二)の当否如何。

一  確定事実(当事者間に争いのない事実と〈証拠・人証略〉並びに弁論の全趣旨により認めた事実である。)〈略〉

二  争点

1 控訴人地労委と被控訴人新日鉄との関係(第10号事件)で,昭和63年4月における主事昇格並びに賃金及び賞与の是正を求める補助参加人竹本の救済申立ての適否。控訴人新開と控訴人地労委との関係(第11事件)で,控訴人新開の昭和54年1月から昭和63年3月までの間の主事昇格並びに賃金及び賞与の是正を求める救済申立ての適否。

すなわち,補助参加人竹本及び控訴人新開の右各救済申立て部分は,労働組合法27条2項の定める期間制限に反しないか。

2 全当事者の関係で,被控訴人新日鉄は被控訴人隈部らの組合内少数派に対し,継続的な不当労働行為意思を持っていたか。

3 控訴人地労委と被控訴人隈部及び同佐々木との関係(第9号事件)で,被控訴人新日鉄の昭和63年4月1日以降における被控訴人隈部及び同佐々木に対する不当労働行為の有無。すなわち,被控訴人新日鉄はその間において被控訴人隈部及び同佐々木に対し,不当労働行為意思を持って主事昇格並びに賃金及び賞与の考課査定において不利益な取扱をしたか。

4 控訴人地労委と被控訴人新日鉄との関係(第10号事件)で,被控訴人新日鉄の昭和63年4月1日以降における補助参加人竹本に対する不当労働行為の有無。すなわち,被控訴人新日鉄はその間において補助参加人竹本に対し,不当労働行為意思を持って主事昇格並びに賃金及び賞与の考課査定において不利益な取扱をしたか。

5 控訴人新開と控訴人地労委との関係(第11号事件)で,被控訴人新日鉄の控訴人新開に対する不当労働行為の有無。すなわち,被控訴人新日鉄は昭和54年1月以降において控訴人新開に対し,不当労働行為意思を持って主事昇格並びに賃金及び賞与の考課査定において不利益な取扱をしたか。

三  争点に関する当事者の主張〈略〉

第三当裁判所の判断

一  第10号事件中の,原判決中控訴人地労委の被控訴人隈部及び同佐々木に対する各敗訴部分の取消請求にかかる控訴人地労委の控訴の適否について

1  原審の甲事件における被告であった控訴人地労委の補助参加人であった被控訴人新日鉄が,原判決中控訴人地労委の被控訴人隈部及び同佐々木に対する各敗訴部分について控訴し(第9号事件),その後,原審の甲及び乙事件における被告であった控訴人地労委が,被控訴人隈部,同佐々木及び同新日鉄に対する各敗訴部分について控訴した(第10号事件)ことは,先に「事案の概要」の冒頭で述べたとおりである。

2  ところで,補助参加人は,訴訟について,補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができないものを除き,攻撃又は防御の方法の提出,異議の申立て,上訴の提起,再審の訴えの提起その他一切の訴訟行為をすることができ(民事訴訟法45条1項),その訴訟行為は,被参加人の訴訟行為と抵触するときに限って,その効力を有しないとされるにすぎない(同条2項)。

補助参加人が控訴の提起をした場合,控訴の提起以前に被参加人とその訴訟の相手方が不控訴の合意をし,又は控訴権の放棄をしていたなどの事由が認められない限り,補助参加人がした控訴の提起は,被参加人の訴訟行為に抵触したとはいえず,無効とはならないと考えられる(昭和46年6月29日最高裁判決)。

さらに,裁判所に係属する事件については,当事者は,更に訴えを提起することができず(民事訴訟法142条),同様に控訴裁判所に係属する事件については,当事者は,更に控訴の提起をすることができない(同法297条,142条)。

3  これらを本件についてみると,原審の甲事件における補助参加人であった被控訴人新日鉄による控訴の提起は,被参加人である控訴人地労委とその相手方である被控訴人隈部及び同佐々木が不控訴の合意をしたなど,前項記載の事由が認められないものであるから,これが無効とはいえず,甲事件中の控訴人地労委と被控訴人隈部及び同佐々木との事件部分を控訴裁判所である大阪高等裁判所に係属させたというべきである。そうすると,更に同一当事者間の同一請求に関し不服範囲が同一である,第10号事件中の控訴人地労委の被控訴人隈部及び同佐々木に対する各控訴の提起は,いずれも民事訴訟法297条,142条の禁ずる二重控訴に当たる不適法のものというほかないから,却下を免れない。

二  争点1について

1  労働組合法27条は,1項において「労働委員会は,使用者が第7条の規定に違反した旨の申立を受けたときは,遅滞なく調査を行い,必要があると認めたときは,当該申立が理由があるかどうかについて審問を行わなければならない。」と,2項において「労働委員会は,前項の申立が,行為の日(継続する行為にあってはその終了した日)から1年を経過した事件に係るものであるときは,これを受けることができない。」とそれぞれ定めている。

控訴人新開及び補助参加人竹本は,昭和54年以降の被控訴人新日鉄による両名に対する主事昇格並びに賃金及び賞与の考課査定における不利益な取扱が労働組合法27条2項にいう「継続する行為」に当たるとして,控訴人新開の救済申立てのすべて及び補助参加人竹本の昭和63年4月における主事昇格並びに賃金及び賞与の是正を求める救済申立てはいずれも適法であると主張し,他方,控訴人地労委は,賃金の支払,それを決定する考課査定及び資格の格付けは一体としてみるべきであるが,それらは1年単位で完結するものであるとして,昭和63年3月以前における行為の是正を求める救済申立部分は不適法であると主張し,また,被控訴人新日鉄は,資格の格付けは,賃金及び賞与の考課査定とは独立した行為であり,1年単位で完結するものであるとして,平成元年4月における補助参加人竹本の主事昇格の是非に関する救済申立てのみが適法であると主張している。

2  そこで,検討するに,前記第二,一の確定事実によれば,昭和63年度に改訂され,本件申立て時である平成元年7月当時において実施されていた被控訴人新日鉄の賃金制度・賃金体系のうち,「資格区分」に関連する部分のあらましは,以下のとおりであった。

(一) 被控訴人新日鉄における技術職従業員の基本賃金は,基本給本給,基本給加給,職務給,職務考課給及び業績給から構成される。基本給本給は,初任基本給本給に資格区分別の昇給額が加算されるものである。昇給額は,昇給基準額を基礎として査定によって昇給の幅を決め,全体額を決定する。昇給基準額は,資格区分によって異なり,昭和63年度においては,主事が2340円,主担当が1840円,担当が1500円,担当補が1220円であった。基本給本給には各資格区分ごとに上限額がある。

(二) 毎年度2回(夏季及び冬季)支給される賞与は,率部分と額部分から構成される。率部分の支給額は,基本給本給額に資格区分別の支給率及び出勤係数を掛けて得た額及び基本給加給の額に全員一律の支給率等を掛けて得た額を合算して算出される。例えば,昭和63年度における主事以下の資格区分別の支給率は,主事が2.0749,主担当が1.9180,担当が1.8308,担当補が1.7436であった。額部分の支給額は,各資格区分別の基準額に上下各30パーセントの範囲内の率を掛け,更に出勤係数を掛けて算出される。例えば,昭和63年度における主事以下の資格区分ごとの額部分の基準額は,主事が37万7200円,主担当が26万6100円,担当が19万5900円,担当補が14万6200円であった。

3  前項でみた被控訴人新日鉄における賃金額及び賞与額の決定システムによれば,基本給本給額は,資格区分別の昇給額が決定しない限り,これを確定させることができず,資格区分別の昇給額は,資格区分によって異なる昇給基準額を基礎に査定で昇給幅を決定するものであるから,資格区分がされていない限り,これを確定させることができないものであった。要するに,被控訴人新日鉄においては,基本給本給額は,従業員の資格の区分(資格の格付け)がされていないと確定しない賃金部分であった。

同様に,賞与額も,率部分は,基本給本給額に資格区分別の支給率等を掛けるなどして決定し,額部分は資格区分別の基準額に30パーセント以内の数値等を掛けて決定するものであるから,従業員の資格の格付けがされていないと確定しないものであった。

これらの点からすると,被控訴人新日鉄においては,その従業員の資格の格付けを行うことによって当該従業員に支給する賃金額の範囲,割合等が決定され,その余の査定作業とあいまって賃金額が具体的に確定されるシステムが実施されていたと認められるから,賃金差別という形態の不利益取扱の有無を判断する際には,同被控訴人における毎年度の資格の格付け,考課査定及び賃金(賞与を含む。)の支払を一体のものとしてみるのが正当であり,被控訴人新日鉄のこの点に関する主張は採用しない。

4  しかし,前述したとおり,被控訴人新日鉄においては,所定の試験結果を踏まえて毎年4月に資格の昇格の有無が決定され,賃金額及び賞与額の決定に必要な考課査定も毎年4月及び10月に行われるものであり,この考課査定は,前年における考課査定がなくても実施可能なものであることは,新採用者や中途採用者の例からしても,容易に推認されるところであるし,例えば,(証拠略)によって認められる査定手順や内容等にかんがみても,控訴人新開及び補助参加人竹本が主張するような「必ず前年の考課査定を前提とし」ていると認めることは到底できない。また,10年間にわたる資格昇格における掛による不推薦行為が全体として一個とみるべきであるとする控訴人新開及び補助参加人竹本の主張(原判決40頁~)は理解し難いものであり,後に認定するような掛試験の内容,実施の状況等に照らしても,通常毎年12月ころ実施される掛試験結果により行われる掛による不推薦行為は,翌年2月ころまでの所の試験の実施時には完結する1回限りの行為とみるほかないものであり,この点についての控訴人新開及び補助参加人竹本の主張は採用できない。

さらに,控訴人新開及び補助参加人竹本は,被控訴人新日鉄は,控訴人新開及び補助参加人竹本に対するこれまでの不利益取扱による昇格及び昇給格差を是正する作為義務があり,右の格差が存在する限り右作為義務が存続するから,不当労働行為も継続しているとも主張する。

しかし,控訴人新開及び補助参加人竹本は,本件において,昭和54年以降の被控訴人新日鉄による両名に対する昇格並びに賃金及び賞与の考課査定における不利益な取扱が労働組合法27条2項にいう「継続する行為」に当たると主張しているのであり,右の不利益取扱を適法であるとし,又はこれを一応不問に付するなどした上で,是正しないことを不当労働行為と主張しているのではないから,労働組合法27条2項の期間の遵守の有無を判断するに当たり,是正しないこと又は是正のない状態等を基準とすることは当を得ないというほかない。また,仮に控訴人新開及び補助参加人竹本の主張する事実を前提とした場合に,被控訴人新日鉄に一般私法上,何らかの是正義務が認められるとしても,この義務又はその存続はあくまでも不利益な取扱の結果にすぎず,この法違反状態が継続する間,不当労働行為が継続するとみることは,労働組合法27条2項が救済範囲を「行為」後の1年間と定めている趣旨に合致しないといわざるを得ず,いずれにしてもこの点の控訴人新開及び補助参加人竹本の主張も採用できない。

5  2から4において述べたところからして,控訴人新開及び補助参加人竹本の本件申立て中,申立て時である平成元年7月の1年前,すなわち,昭和63年7月の賃金及び賞与の支払,それを決定した同年4月の考課査定及び資格の格付け並びにそれ以降の各行為に関する救済の申立ては,労働基準法27条2項の期間を遵守したものであって適法であり,それ以前,すなわち,昭和63年3月以前の各行為(ただし,同年4月の資格の格付けと一体となる昭和62年12月の掛試験結果による不推薦行為は除かれる。)に関する救済の申立ては不適法である。この点においては,控訴人地労委の主張が正当である。

三  争点2について

1  被控訴人隈部らは,被控訴人新日鉄が二十数年にわたって被控訴人隈部ら組合内の少数派グループに対し継続的に強固な嫌悪意思を持っていたと主張し,これに沿う証拠として,(証拠略)等を提出又は指摘する。

ところで,被控訴人隈部らは,本件申立て及び本件訴訟を通じ,被控訴人新日鉄から一律かつ同一内容の不利益取扱を受けたと主張するものではないし,原判決別紙(一一)ないし(一四)記載の被控訴人隈部らに対する考課査定結果並びに賃金額及び賞与額に照らしても,被控訴人新日鉄が被控訴人隈部らを一律に取り扱ったものではないことは明らかであり,この点は,補助参加人竹本が昭和63年12月の苦情申立てに加わらなかったことや,被控訴人隈部らのグループの一員であると自認する久保田博昭(〈証拠略〉)が,「自分には差別が少なかった。直属の上司や工場長と話し合って,一時金については主担当の平均が付いている。」などと述べている(〈証拠略〉)ことからしても動かし難いところである。したがって,被控訴人隈部らに対する被控訴人新日鉄による処遇(被控訴人隈部らが不当労働行為と主張しているもの)は,被控訴人隈部らに対する成績,能力等の評価がその一因となっていることも否定できないところであるから,以下の検討においては,被控訴人隈部らが指摘する事由が被控訴人新日鉄の意思において行為の決定的な又は少なくとも通常結果に対する原因となり得るような,有力な原因であったかどうかをみていくこととする。

乙A128によれば,「八幡製鐵所80年史」中に,昭和55年3月1日に行われた座談会における元八幡製鐵所の労働部長の発言として,「会社側としましては,戦前から「労使協調」という伝統的な労政の筋は一貫しておりまして・・・」とか,「八幡の場合,レッド・パージといっても世間一般のパージとは内容が違っております。昭和25年11月1日,起業祭の直前に231名の整理を打ち出したわけですが,これは8月頃から準備にかかりまして,木下さんという顧問弁護士に相談しながらやりました。…世間一般のパージは,マッカーサー書簡を根拠にして共産党を切るというやり方なんです。ところが,木下さんは一つの理論を持っておりまして,「八幡は同じことをやってはいけない。マッカーサーは民間に対して命令してはいない。そういう風潮に対して善処しなさいと言っているだけなんだ。一方,会社には就業規則というものがある。これに違反して職場秩序を乱している者の具体的言動をつかんで,その証拠の上に立って企業防衛のために整理するという理論に徹しなければ,後に訴訟が起こった場合に負けるおそれがある。」ということでした。こうして,3ケ月間徹底した証拠集めとその確認をしました結果,当初見込んだ500人の中から証拠不十分な者を除外しまして,最終的に231名の破壊分子を企業外へ排除したわけです。こうして健全な組合の基盤ができたんです・・。」との記載があることが認められる。

乙A136によれば,堺製鐵所の従業員で構成されるかりがね会の広報誌である「かりがね」(57.4.20)に,昭和57年1月に開催された民主社会主義全国研究会議(略称「民社研」)の報告が掲載され,その中に,「全国から民主党はじめ民社研を支持する労組団体,企業からの派遣者など約1000人(当所から私を含めて3名)が参加した」などの記載があることが認められ,同研究会議で「民主的労働運動と労使関係」と題する講義要領である乙A135が使用されたことが乙C32により認められる。なお,乙C32及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人新日鉄の従業員が「民社研」に参加した場合には,基準内賃金の支払を受けることができたことが認められる。

乙A124は,「連絡事項」との題名の記載の下に「1労働 (1)組合役選について」とあり,その細目として「◎役選のポイント ◎役選の意義 ◎左派の動向 ◎具体的とりくみ要請 ◎対策の中味 ◎職制のバックアップ」が挙げられ,細目の下に「中期計画早期完遂~組合全面協力が必要 安定職場秩序維持のために左派G打撃必要 鉄連,新日鉄労連等労働運動転換期にあり,8労組の基盤強化を会社として考える。」などの記載がある昭和63年7月5日付けの文書である。

乙A261は,「厚生施設管理業務マニュアル」の抜粋で,思想対策として,思想偏向者の把握,寮内での文書・署名活動等の項目で対策内容を記載したものである。甲28は,昭和40年8月20付(ママ)けの広畑製鐵所作成の「人間関係」と題する資料で,「民青又は共産党に加入している部下の場合」,「民青又は共産党に入りかけている部下の場合」などの例のもとに質問及び回答を記載したものである。

乙A128によって認められる事実は,日本全体が特殊な状況にあった時期においての八幡製鐵全体における出来事である上,八幡製鐵におけるパージが法律に則ったものであることを目指そうとした意図が窺えるものであり,乙A136によって認められる事実は,被控訴人新日鉄においても「民社研」を支持し,参加従業員に便宜を供与するものと評価できるものである。いずれも被控訴人新日鉄が被控訴人隈部らの所属する共産党とは一線を画する姿勢・方針を持っていたことを推測させるものではあるが,時期,事実の規模,組織の違い等からして,直ちにこれらが,昭和50年代以降においての堺製鐵所における被控訴人隈部らに対する継続的な不当労働行為意思の原因となり得るようなものと認めることは甚だ困難である。

また,乙A124は,被控訴人新日鉄の組織のいかなる類の文書であったかを明らかにする証拠がないものであるし,乙A261は,乙B125によって認められる事実等からして,そこに記載された事項を当時以降の堺製鐵所の職制にあった者が認識していたかどうかも疑問が残るものであり,甲28は,広畑製鐵所の資料である上,違法な扱いを是認するものではなく,いずれも被控訴人新日鉄の堺製鐵所における継続的な不当労働行為意思の有無を直接左右するようなものとはいえないものであった。

2  次に,前述の確定事実によれば,被控訴人隈部らは,昭和40年代に組合内での少数派グループを形成し,昭和45年ころ以降,堺製鐵所における「職場新聞」を,昭和51年から日本共産党堺製鐵所職場新聞などとと称して「きさらぎ」等をそれぞれ発行し,同紙等に組合主流派を批判するだけでなく,被控訴人新日鉄堺製鐵所の経営合理化に反対し,その従業員の出向や配転に反対する記事を掲載したほか,被控訴人佐々木を除く被控訴人隈部らは,昭和60年11月には堺労働基準監督署長に労働基準法104条に基づく処置を求めたことがあることなどが認められる。(証拠略)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人隈部は,堺製鐵所大形工場分塊掛に転属した後の昭和60年11月ころ被控訴人新日鉄に対し組合を通さずに,職務上の構内移動のための自転車の備付けを要求し,これが実現したことが認められる。また,被控訴人隈部らが昭和41年以降組合の役員選挙に立候補したことなども前述したとおりである。

しかし,被控訴人隈部らの発行した各「職場新聞」はほとんど月刊のものであって,組合員を主たる配付先とするのみで(乙C32),実質配付数も証拠上明らかではない(ただし,〈証拠略〉では,400部を基本に,場合によれば1000部であったとし,〈証拠略〉では,場合によっては300であったり,500であったり,1500であったりとする。)上,これらの記事や活動によって組合の統制に反する事態が発生するなどして組合の運営に具体的かつ差し迫った障害が生じたとか,ましてや堺製鐵所における企業秩序が乱れ,指揮命令等に重大な支障があったと認めるに足りる証拠はなく,被控訴人隈部らの要求を被控訴人新日鉄が取り上げて実現したこともあるというのである。さらに,被控訴人隈部らの組合役員当選は昭和47年における2回にすぎず,その得票率も,昭和53年の被控訴人隈部を除いて,おおむね10パーセント台で推移していたのである。(〈証拠略〉)

第1段の諸事実も,第2段の事情を加味して考えると,被控訴人新日鉄が被控訴人隈部らに対し継続的に不当労働行為を行おうとの意思を持つに至るとするには,なお不十分なものといわざるを得ない。

3  そこで,被控訴人隈部らに対する具体的な支配介入等の事実の有無について検討する。

乙C49(10頁)に,昭和43年の組合役員選挙の際,役員に立候補した控訴人新開の推薦人となった造塊掛の従業員であった林に対し,掛長や作業長から,「ちょうど対抗馬が当時造塊の方から出ていて,混乱するんで取りやめてくれんか,もし選管の方でだめだったら仕方がないけど,取り下げてもらえるんやったら,一ぺん言うてみてくれんかという話がありました。」旨,同号証(19,20頁)に,昭和47年に控訴人新開に対し,当時の掛長であった林から,「君はいろいろ党活動やら頑張っとるが,・・・考えて,組合活動をそこそこにやめて工長にでもならんかというようなことを言われた…。林掛長は,組合運動をやめれば,工長でもいつでもしてやるんで,考えたらどうかという話を公然としました・・。」旨,同号証(21,22頁)に,藤田スミが昭和48年に大阪府会議員選挙のビラを食事時間中に配付したところ,掛長から就業時間中の選挙運動は違反であるとして調書を取られた旨,同号証(22,23頁)に,昭和47年の選挙後,「会社が支持派の組合員に入れるようにパンフレットを作って配布したり,時間内でも応援あいさつをして回るとか,工長を推薦者に立てる等の,仕事中でも選挙運動を工長がやって回るということで,私に入れると損するぞというような締付けがものすごく強うなり・・。」旨の控訴人新開の各陳述記載がある。

乙C58(13~18頁)に,被控訴人佐々木が,昭和57年,堺製鐵所の大形センター付きの久米労働(ママ)掛長から,「何人立候補するんだ。どうだ,会社に協力してくれんかね。」と言われたが,その場で「そんなことは不当労働行為である。」と言いましたら,同掛長は「そうか。」と言って引き下がった。また,昭和59年にも,久米労政掛長から,「選挙に出るかね。ひとつ会社に協力してもらえんかね。」と言われ,「基本的なことですから,問題になりますよ。」と言ったら,「そうか,じゃ選挙のことはもう言わん。」とのやり取りがあった旨の被控訴人佐々木の陳述記載があり,乙A243(被控訴人佐々木のノート)には右の昭和59年当時の会話があったとの記載があり,乙A255の2(右同)には「久米掛長立候補辞退迫る。」との記載があるようである。

乙C50(29,30頁)及び同55(7,8頁)に,補助参加人竹本の昭和58年当時の上司であった横山工長がそのころ同補助参加人に対し,「お前は仕事も良くするし,もったいないし,活動をやめんか。」,「大江(好文)作業長は絶対に昇格はさせないと言っていた。」と告げた旨,乙C50(31頁)及び同55(10頁)に,岡本掛長が昭和59年ころ補助参加人竹本に対し,「お前は電検3種の資格を持っているし,仕事も良くやるので,もったいない。活動をやめんか。」と言い,同補助参加人が「そういうつもりはない。」と言いますと,「おまえの考えはよく分かった。今後何も言わない。」と言って終わった旨の同補助参加人の各陳述記載がある。

乙C43(30~32頁)に,被控訴人隈部が昭和45年ころから10年間ほど,ビラを配布したときなど,「古い工長がみんなそろって共産党なんかやめろというようなことを毎日毎日言うという状況が続きましたし,・・・」,その後約10年が経ったころには,司城掛長,篠原作業長が,「もう随分活動やったし,いいんじゃないか。」,「わしに任してみんか。」などと言った旨,同号証(35頁)に,被控訴人隈部に対し,「共産党であったり,組合活動やってる人は絶対枠の外や。」との発言をした者がいた旨の被控訴人隈部の各陳述記載がある。

被控訴人隈部らが支配介入等の具体例として挙げる,以上の堺製鐵所の職制にある者の言動は,それ自体,曖昧なものや趣旨が被控訴人隈部らの主張するようなものであるかが疑問のものもある(例えば,補助参加人竹本は,昭和63年12月当時,製鋼工場機械運転掛において大江好文掛長のもとで掛推薦を受けた。)上,被控訴人隈部らが支配介入だとか,不当労働行為だとするものであるにもかかわらず,各言動があった当時,被控訴人隈部らのグループに報告,検討されたとか(なお,乙A124については,乙A112の「きさらぎ」に批判記事が掲載された。),前記の「職場新聞」やビラに記載されたとか,正式に当該上司なり,堺製鐵所なりに対して抗議がされたとか,苦情処理制度を利用して苦情申立てがされたなどのことがあったとは認められないものである。ことに,(証拠略)によれば,被控訴人隈部においては,すでに八幡製鐵時代の昭和44年に「職務給の方移動に関する苦情」を申し立て,同年9月18日付けの「裁定のおしらせ」を得ていたことが認められ,また,控訴人新開においては,組合の支部長の地位にあった時期に「支配介入」があったとしながら,これを組合支部で論議の対象とするなどのこともせず,被控訴人佐々木においては,少なくとも昭和59年当時の久米労政掛長の言動を「不当労働行為」としてノートに明確に記載しながら,それぞれ格別の措置を取らなかったのである。

それのみならず,被控訴人隈部らの一員である久保田博昭に対し堺製鐵所の職制にある者が前述のような取扱をしたり,(証拠略)によれば,昭和58年当時堺製鐵所圧延部ストリップ工場機械運転掛の作業長の地位にあった高濱久敏は,同年6月ころから同掛の被控訴人隈部を含む10名弱の従業員に対し模擬問題を配布,採点するなどして昭和59年度の掛試験の準備の援助をしたことが認められるのである。

これらの事情にかんがみると,本項で掲げた乙C49以下の各証拠にある各陳述どおりの事実が仮にあったとしても,いずれも当該言動がされた当時,被控訴人隈部らにおいても特に取り上げて問題視する程度にも至らない,いわば一過性のものと受け止めていたものと推認するのが相当であり,前段で認定した事情をも考え合わせると,堺製鐵所の職制にある者らの右言動をもって,被控訴人新日鉄の被控訴人隈部らに対する長年の継続的な不当労働行為意思の徴表とみることはまことに困難なものといわざるを得ない。

4  被控訴人隈部らは,以上のほか,主事昇格のための試験の制度及びその運用に恣意が入り込み易いこと,主事昇格における「一般職務に従事し,勤続25年以上で会社に対する貢献度が高いと認められる者」という基準や,被控訴人隈部,控訴人新開及び被控訴人佐々木の同期入社者の主事昇格割合,被控訴人隈部らの能力,勤務成績等からして,共産党員としての組合少数派の活動をしていたことによって被控訴人新日鉄から貢献度昇格基準による主事昇格を阻まれたとか,一部の試験成績の結果によって掛推薦をしなかったことから,被控訴人新日鉄に,その意に反する少数派の組合活動を嫌悪する不当労働行為意思があったかのように主張する。

しかし,被控訴人隈部,控訴人新開及び被控訴人佐々木は,昭和54年以降に限っても職務能力,勤務成績,試験結果等の具体的な内容の主張立証をしていない上,同被控訴人らの主張する前記25年勤続者の昇格基準も,前述のとおり,25年勤続者の全員が例外なく主事に昇格するものではないから,25年勤続後も主事昇格を果たしていないからといって,当然に被控訴人新日鉄に不当労働行為意思があったということはできない。

また,被控訴人隈部らは,被控訴人新日鉄の職制にある者による,被控訴人隈部らに対する一貫して低い日常の考課査定評価や劣位の職務への配置等が,被控訴人隈部らに対する差別意思の徴表に他ならないとも主張するが,この点も右と同様採用することができない。

5  以上検討したとおり,被控訴人新日鉄において被控訴人隈部らに対する継続的な不当労働行為意思があったと認定することはできない。

四  争点3中,被控訴人隈部に対する不利益取扱の有無について

1  前記三,3で検討した司城掛長らの被控訴人隈部に対する言動のほか,特に昭和63年4月以降における被控訴人新日鉄の被控訴人隈部に対する不当労働行為意思の徴表と見られる事態があったとの主張立証はない。

2  まず,昭和63年度から平成4年度までの間における資格昇格に関わる被控訴人隈部に対する不利益な取扱の有無についてみることとする。

(一) 同期間における被控訴人隈部の掛試験の受験の有無,合否,同掛試験の受験者数,合格者数,同年度の工場試験及び所の試験の合格者数は,原判決別紙(六)記載のとおりである。

(二) (証拠略)並びに弁論の全趣旨によれば,次のとおり認めることができる。

(1) 昭和63年度における大形工場分塊掛の筆記試験は,問題及び作文について実施され,被控訴人隈部の得点は,350点満点の123点で,受験者4人中の3位であった。

(2) 平成元年度における同掛の筆記試験は,国語,数学,経営生産,労働,安全衛生,一般の科目について実施され,その受験者,各得点は別紙〈略〉三の該当欄に記載のとおりである。

(3) 平成2年度における同掛の試験の受験者は,久保田博昭と被控訴人隈部であり,両名とも合格した。

(4) 平成3年度における事業開発推進部鋼材加工センターにおける試験は,専門科目,一般常識面接及び論文について実施され,被控訴人隈部の成績結果の概要は以下のとおりであった。専門科目では,ワースト1。一般常識では,よく頑張っていたが,科目の成績にむらがあった。面接では,総合エンジニアリングセンターの周辺常識の勉強が必要。論文では,安全施策のみではなく,本来業務の言及,提言が必要とされた。

(5) 平成4年度における同加工センターにおける試験は,専門科目,一般常識,面接及び作文について実施され,被控訴人隈部の成績結果の概要は以下のとおりであった。専門科目では,極めて悪い。一般常識では,労働,在庫削減はよくできていたが,他の科目に成績のむらがあった。面接では,多能工化を推進するなかで,センター職場以外にも積極的に業務スパンを拡げる前向きな姿勢が必要。作文では,平均点であった。

以上の事実が認められる。

以上の試験結果と各年度における大形工場分塊掛及び事業開発推進部鋼材加工センターにおける合格者数等を考え合わせると,被控訴人隈部が掛試験に合格せず,工場試験及び所の試験への推薦を受けられなかったことはやむを得ないものであり,正当な組合活動のゆえの不利益な取扱があったとは認められない。被控訴人隈部は,カンニングや問題の漏洩があったようにも主張するが,これを認めるに足りる証拠はなく,他に右の認定判断を左右するに足りる証拠はない。

なお,被控訴人隈部が平成2年度の掛試験以外の試験において不利益な取扱を受けた旨の主張立証はない。

3  次に,昭和63年度から平成4年度までの間における賃金及び賞与の考課査定に関わる被控訴人隈部に対する不利益な取扱の有無についてみることとする。

被控訴人隈部が,原判決別紙(二)記載のとおり,同期間,考課査定によって決定される基本給本給の昇給比率,職務考課給における考課給係数,賞与の額部分の基準額が大形工場分塊掛及び鋼材加工センターにおける主担当にある従業員の平均を下回る評価を受けてきたことは,同被控訴人が主張するとおりである。

しかし,被控訴人隈部は,職務能力,勤務成績等が大形工場分塊掛及び鋼材加工センターにおける主担当の平均を上回るものであるとの具体的な主張立証をしておらず,被控訴人新日鉄による右の評価が被控訴人隈部の正当な組合活動のゆえの不利益な取扱によるものと判断することはできない。

かえって,前項で認定した掛試験結果や前記裁定内容によっても,被控訴人隈部の職務意欲,知識に偏りがあり,実務的には平均的な評価を得るに至ることに強い疑問が残る上,(証拠略)によって窺われる,被控訴人隈部の大形工場分塊掛及び鋼材加工センターにおける同被控訴人の元の上司による別紙六の該当欄記載の業務遂行状況等からすれば,原判決別紙(一一)記載の同被控訴人に対する考課査定はむしろ正当なものであったと一応認められる。

五  争点3中,被控訴人佐々木に対する不利益取扱の有無について

1  前記三,3で検討した久米掛長の被控訴人佐々木に対する言動のほか,特に昭和63年4月以降における被控訴人新日鉄の被控訴人佐々木に対する不当労働行為意思の徴表と見られる事態があったとの主張立証はない。

2  まず,昭和63年度から平成4年度までの間における資格昇格に関わる被控訴人佐々木に対する不利益な取扱の有無についてみることとする。

(一) 同期間における被控訴人佐々木の掛試験の受験の有無,合否,同掛試験の受験者数,合格者数,同年度の工場試験及び所の試験の合格者数は,原判決別紙(九)記載のとおりである。

(二) (証拠略)並びに弁論の全趣旨によれば,堺製鐵所大形工場精整掛では昭和63年度から平成4年度までの間,主事昇格のための掛試験として筆記試験を行っていたが,平成2年度及び同3年度においては,筆記試験の他に,同掛において1年以上の間「統括」の地位にあった者1名について筆記試験を免除して工場試験及び所の試験への推薦を行っていたことが認められ,被控訴人佐々木は,昭和63年度以降毎年度の同掛の筆記試験を受験したが,いずれも合格しなかったし,筆記試験免除による推薦も受けられなかったことが認められる。そして,(証拠略)によれば,同掛の平成元年度における試験の受験者,試験科目,受験者の各得点,順位,合否,推薦の有無は,別紙四の該当欄に記載のとおりであることが認められるが,その余の各年度における試験の結果は不明である。

被控訴人佐々木は,昭和63年度,平成2年度及び同3年度の各掛試験に合格するに足りる成績を収めた旨の具体的な主張立証をしていないから,同各年度における掛試験に合格しなかったことが,被控訴人新日鉄による不利益な取扱によるものであると認めることはできないし,平成元年度における成績等は,別紙四記載のとおりであるから,被控訴人佐々木が掛試験に合格せず,工場試験及び所の試験への推薦を受けられなかったことはやむを得ないものであり,正当な組合活動のゆえの不利益な取扱があったとは認められない。この認定判断を左右するに足りる証拠はない。

(三) ところで,大形工場精整掛では平成2年度及び同3年度において,同掛において1年以上の間「統括」の地位にあった者1名について筆記試験を免除して工場試験及び所の試験への推薦を行っていたことは,前項で述べたとおりであるが,「統括」は,工長の指揮のもと,配置職務を遂行するとともに,一般者中の第一人者として,管理・改善業務,非定常時・トラブル時の作業対応,他の一般者の指導・育成等の中心となり,工長を補佐する役割を担う者であり(第二,一4(一)(1)),被控訴人佐々木の後に述べる職務の遂行状況等にかんがみると,同被控訴人が「統括」の地位になかったこと,したがって,筆記試験免除による推薦を受けられなかったことも致し方がないものであり,これを被控訴人新日鉄による不利益な取扱ということは当を得ない。

3  次に,昭和63年度から平成4年度までの間における賃金及び賞与の考課査定に関わる被控訴人佐々木に対する不利益な取扱の有無についてみる。

被控訴人佐々木が,原判決別紙(一四)記載のとおり,同期間,考課査定によって決定される基本給本給の昇給比率,職務考課給における考課給係数(ただし,昭和63年度上期,平成3年度上期及び下期をいずれも除く。),賞与の額部分の基準額が大形工場精整掛における主担当にある従業員の平均を下回る評価を受けてきたことは,同被控訴人が主張するとおりである。

しかし,被控訴人佐々木は,職務能力,勤務成績等が大形工場精整掛における主担当の平均を上回るものであるとの具体的な主張立証をしておらず,被控訴人新日鉄による右の評価が被控訴人佐々木の正当な組合活動のゆえの不利益な取扱によるものと判断することはできない。

かえって,前項で認定した掛試験結果や前記裁定内容によっても,被控訴人佐々木の職務意欲,知識に偏りがあり,実務的には平均的な評価を得るに至ることに強い疑問が残る上,(証拠略)によって窺われる,被控訴人佐々木の大形工場精整掛における同被控訴人の元の上司による別紙七の該当欄記載の業務遂行状況等からすれば,原判決別紙(一四)記載の同被控訴人に対する考課査定はむしろ正当なものであったと一応認められる。

六  争点4について

1  前記三,3で検討した岡本掛長らの補助参加人竹本に対する言動のほか,特に昭和63年4月以降における被控訴人新日鉄の補助参加人竹本に対する不当労働行為意思の徴表と見られる事態があったとの主張立証はない。

2  原判決別紙(八)記載のとおり,補助参加人竹本は,昭和63年度の掛試験を受験したが合格を果たせなかったものの,平成元年度にはこれに合格するに至り,平成2年度には主事に昇格したことは前述したとおりである。

そこで,補助参加人竹本については,まず,昭和63年度の掛試験で合格の結果を得られなかったことに関わる不利益な取扱の有無についてみることとする。

同年度における堺製鐵所製鋼工場機械運転掛の掛試験の受験者数,合格者数,同年度の工場試験及び所の試験の合格者数は,原判決別紙(八)記載のとおりであり,(証拠略)によれば,昭和63年度の製鋼工場機械運転掛の掛試験は,作文のみが実施されたことが認められるが,その問題,補助参加人竹本の作文答案の内容が不明であることから,同補助参加人の不合格が被控訴人新日鉄による不利益な取扱によるものとは認めることはできない。

なるほど,(証拠略)並びに弁論の全趣旨によれば,次のとおり認めることができる。すなわち,補助参加人竹本は,製鋼工場機械運転掛の昭和58年度の筆記試験では,作文を除いて,200点満点の169点を得たこと,昭和59年度では,作文を除いて,500点満点の424.5点を得たこと,昭和60年度では,作文を除いて,500点満点の466.5点を得たこと,平成元年度では,200点満点の116点を得たこと,平成2年度では,筆記試験において400点満点の303点を,作文においてはB判定をそれぞれ得たことが認められる。

以上の各試験の結果からしても,補助参加人竹本が筆記試験にはかなり高い適性を示し,各種の資格試験に合格している(〈証拠略〉)ことからしても,相当の知識を持ち,潜在的には相応の能力を持つことは窺えるものの,作文においてその知識,能力等を発揮し得るかは,自らが作文は好きじゃないと述べている(〈証拠略〉)ことをも考え合わせると,疑問が生じないわけではなく,以上の諸点を根拠に昭和63年度の作文試験に合格判定を得ることが確実であったと推認することは困難である。また,昭和63年度前の各年度における試験の成績が高い水準にあったとしても,そのことから昭和63年度の試験に合格するものと取り扱うべきであるとはいえないことも,毎年異なる問題について異なる受験者の数,範囲の下で行われる相対評価試験の性質からして明らかである。

なお,補助参加人竹本が平成元年度の掛試験以外の試験において不利益な取扱を受けた旨の主張立証はない。

いずれにしても,補助参加人竹本が,平成2年度における主事昇格に至るまでの間に被控訴人新日鉄による不利益な取扱によって同昇格を遅延させられたと認めるには足りない。

3  第二,一8で述べたとおり,被控訴人隈部らは,本件申立てにおいて,(一) 雇用後19年が経過した時点で主事に昇格させ,その場合の賃金及び賞与と現実に支払われた賃金及び賞与との差額を支払うこと,(二) 予備的に,被控訴人隈部及び控訴人新開については,雇用後25年が経過した時点で主事に昇格させ,その場合の賃金及び賞与の差額を支払うこと,(三) 主事昇格が認められない場合,昭和54年から平成4年9月までの賃金及び賞与について,被控訴人隈部らに対する考課査定を所属する掛の主担当の平均の考課査定評価に是正し,その場合の賃金及び賞与の差額を支払うこと,(四) 陳謝文の手交及び掲示をすることを求めたのであるが,補助参加人竹本は平成2年4月(勤続年数は23年)に主事に昇格したのであるから,同補助参加人の救済申立ての趣旨は,右の(一),(三)のうちの昭和54年から平成2年3月までの賃金及び賞与について,同補助参加人に対する考課査定を所属掛の主担当の平均の考課査定評価に是正し,その場合の賃金及び賞与の差額を支払うこと及び(四)であると考えられ,右の(一)についてはすでに判断した。

ところで,前記二で述べたとおり,補助参加人竹本の本件申立て中,昭和63年3月以前の各行為に関する救済の申立ては不適法であるから,ここでは右の(三)のうちの昭和63年4月から平成2年3月までの賃金及び賞与に関する救済申立てについて判断を要することとなる。

さらに,補助参加人竹本は,本件申立てにおいて,基本給及び一時金の「差別額」の支払を求めているが,昭和62年以降基本給については差別がなく,平成元年においては一時金についても差別がないことを自認しているし(〈証拠略〉),原判決別紙(一三)の記載によれば,平成元年度において,同補助参加人が,基本給本給の昇給比率,職務考課給における考課給係数,賞与の額部分の基準額(ただし,上期は除く。)が製鋼工場機械運転掛における主担当にある従業員の平均を上回る評価を受けてきたことが明らかである。

そこで,以下においては,専ら補助参加人竹本の昭和63年度における賞与の額部分の考課査定に関わる不利益な取扱の有無について判断する。

前述したとおり,賞与の額部分の支給額は,各資格区分別の基準額に,各人の資格区分に対応する職務遂行度合や勤務成績等を評価して上下各30パーセントの範囲内の率を掛け,更に出勤係数を掛けて算出されるものであり(第二,一5(一)(6)),その査定に当たっては,短期間の会社業績に対応するものとして,対象期間の各6か月間に掛の目標にいかに応える努力をしたかという実績が相対評価される(第二,一5(二)(3))こともある。

これらを前提にしてみると,補助参加人竹本は,昭和63年当時の直属の上司(作業長又は掛長であった大江好文)から,主担当として特に優れていた電気等に関する知識を生かす積極的な発言・行動,リーダーシップに欠け,掛の安全推進委員としての活発な活動が乏しかったと評価されていた(〈証拠略〉)のであるから,昭和63年度の賞与の額部分について原判決別紙(一三)中の該当欄記載の程度の評価,金額にして,同補助参加人の申立てによれば,中元賞与が1万0900円,年末賞与が9900円だけ平均を下回っていた(〈証拠略〉)程度の評価は,正当な組合活動を理由とした不利益な取扱には当たらないものというべきである。

七  争点5について

1  前記三,3で検討した昭和43年から同47年ころまでの状況のほか,特に昭和63年4月以降における被控訴人新日鉄の控訴人新開に対する不当労働行為意思の徴表と見られる事態があったとの主張立証はない。

2  控訴人新開の本件申立て中,昭和63年度の資格昇格に関する掛試験による不推薦行為を除いて,昭和63年3月以前の各行為に関する救済の申立ては不適法であるから,ここでは昭和63年度から平成4年度までの間における資格の格付けに関わる問題点を取り上げるべきこととなるが,原判決別紙(七)記載のとおり,控訴人新開は,平成元年度には掛試験を受験せず,平成3年度及び同4年度には掛から推薦を得ているから,昭和63年度及び平成2年度における資格の格付けに関わる不利益な取扱の有無について判断することとする。

(一) 昭和63年度及び平成2年度における製鋼工場機械運転掛の掛試験の受験者数,合格者数,同年度の工場試験及び所の試験の合格者数は,原判決別紙(七)の該当欄に記載のとおりである。

(二) 補助参加人竹本について述べたとおり,昭和63年度の製鋼工場機械運転掛の掛試験は作文のみが実施されたのであるが,控訴人新開の昭和63年度の掛試験の作文答案が明らかではないうえ,同控訴人が同年度の掛試験に合格したであろうと推認すべき事情も認められないから,同年度の資格格付けに関わり被控訴人新日鉄に不利益な取扱があったとはいえない。

(三) (証拠略)によれば,同掛の平成2年度における試験の受験者,試験科目,受験者の各得点,順位,合否,推薦の有無は,別紙五の該当欄に記載のとおりであることが認められ,これらの結果によれば,日常の順位に関する評価を除いても,控訴人新開が平成2年度において同掛から推薦を受けられなかったことももっともなものというほかなく,これが被控訴人新日鉄の不利益な取扱によるものとは認められない。

なお,控訴人新開が平成3年度及び同4年度の掛試験以外の試験において被控訴人新日鉄から不利益な取扱を受けた旨の主張立証はない。

3  最後に,昭和63年度から平成4年度までの間における賃金及び賞与の考課査定に関わる控訴人新開に対する不利益な取扱の有無についてみる。

控訴人新開が,原判決別紙(一二)記載のとおり,同期間,考課査定によって決定される基本給本給の昇給比率,職務考課給における考課給係数(ただし,平成元年度下期,平成2年度上期及び下期を除く。),賞与の額部分の基準額が製鋼工場機械運転掛及び生産技術部設備室基盤整備センターにおける主担当にある従業員の平均を下回る評価を受けてきたことは,同控訴人が主張するとおりである。

しかし,控訴人新開は,職務能力,勤務成績等が製鋼工場機械運転掛及び基盤整備センターにおける主担当の平均を上回るものであるとの具体的な主張立証をしておらず,被控訴人新日鉄による右の評価が控訴人新開の正当な組合活動のゆえの不利益な取扱によるものと判断することはできない。

かえって,前項で認定した掛試験結果,前記裁定内容や(証拠略)によっても,控訴人新開には一般及び専門双方にわたる知識不足や職務意欲の不足が顕著であり,実務的にも平均的な評価を得ることは困難な点があり,(証拠略)によって窺われる,控訴人新開の製鋼工場機械運転掛及び基盤整備センターにおける同控訴人の元の上司による別紙八の該当欄記載の業務遂行状況等からすれば,原判決別紙(一二)記載の同控訴人に対する考課査定はむしろ正当なものであったと一応認められる。

第四結論

以上のとおり,被控訴人新日鉄は昭和54年以降において被控訴人隈部らに対する継続的な不当労働行為意思を持っていたとはいえないし,昭和63年4月以降において被控訴人隈部らに対し不当労働行為意思をもって不利益な取扱をしたとも認められないから,原審裁判所は,「本件救済命令の主文1項及び2項を取り消す。原告隈部,同新開,同竹本及び同佐々木の各請求をいずれも棄却する。」との判決をすべきであった。

そこで,当裁判所は,第9号事件の控訴に基づき,原判決中,控訴人地労委の被控訴人隈部及び同佐々木に対する各敗訴部分をいずれも取り消した上,同被控訴人らの控訴人地労委に対する各請求をいずれも棄却する。第10号事件における控訴人地労委の控訴中,被控訴人隈部及び同佐々木に対する各敗訴部分の取消請求にかかる部分を二重控訴に当たる不適法のものとしていずれも却下し,被控訴人新日鉄に対する敗訴部分の取消請求にかかる部分を棄却する。なお,原判決は,乙事件において,昭和63年3月以前における補助参加人竹本の不当労働行為についての救済申立てを却下した本件救済命令は適法であるとの判断をしたのみで,本件救済命令の主文第1項及び第2項を取り消したが,これまで述べたとおり,昭和63年4月以降においても被控訴人新日鉄の補助参加人竹本に対する不利益な取扱があったとは認められないから,乙事件における原判決の判断は結論において正当であったので,控訴人地労委の被控訴人新日鉄に対する控訴を棄却する。控訴人新開の救済申立てのうち一部を却下し,その余を棄却した本件救済命令及びこれを支持した原判決はいずれも正当であるから,第11号事件の控訴を棄却することとする。

よって,主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結日 平成12年6月16日)

(裁判長裁判官 竹原俊一 裁判官 大出晃之 裁判官 東畑良雄)

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